トム・ハートマン 著 の、 『なぜADHDのある人が成功するのか』 という本を読んでみました。
ADHD関連の多くの本は、 「忘れ物を減らすための工夫」「上手に片付けをする方法」「薬物療法」 など、 いかに失敗を減らすか、どうやって短所をカバーするかということばかりに重点が置かれて書かれています。取り上げられるのは 「短所」 ばかり。
なかなか、「長所」 を活かして成功するための指南書というのは無いものですが、この 『なぜADHDのある人が成功するのか』 という本は、まさにそれだと思います。
「短所」 をカバーする努力も必要かもしれませんが、「長所」 の活かし方を知ることも、同じように必要なのではないでしょうか?
そうでなければ、ADHDの人達には、イキイキと生きていく道が無いですよね?
コソコソと短所を隠すことばかりに生涯を費やして、それがベストな道だとは思えません。
私は最初、このインパクトの強いタイトル 「なぜADHDのある人が成功するのか」 にやや抵抗感を持ちました。[これは著者のサクセスストーリーなのか? なぜそんなに上から目線なのだ?] と(笑)。
でも、この本のサブタイトルは、「自分らしいビジネスライフを送るために」というやさしい感じのもの。
この本を、一読した後の感じでは、私としては、中の内容は、サブタイトルの方がしっくりくるな、という印象でした。
英語を日本語に直したタイトルなので、もしかすると、ちょっとニュアンスも違うのかもしれませんね。
因みに、英語では 「ADHD Secrets of Success」 となっています。
著者の事業家・企業家としての成功と失敗や、ADHDの人が成功する為に知っておいた方がいいこと がいっぱい詰まっている本。
そんな風に感じました☆
大人のADHDの人は、是非、読んでみてください。少し、内容を抜粋してご紹介させていただきます。
・ 先史時代と呼ばれる頃、地球上のすべての人類は、狩猟社会に属していた。1万年前に農業革命が起き、家畜を飼い、作物を植え、定住し、農耕社会を作る人々がいくつかの大陸に出現した。
牧畜と農業は、狩猟より効率が良いので、地球の人口は爆発的に増え、新しい文化をもたらした。
農耕以前の狩猟社会は、その後の農耕社会や現代文化とはまったく異なる、独自の生活形態を備えていた。
異なる文化規範を持ち、そこで生き残るにはまるで別のパーソナリティーが必要とされ、その生活様式は現在でも2万年前われわれの先祖が生きたように生きている土着の先住民にみることができる。
人類学的観点もしくは歴史的観点からみると、狩猟社会におけるサバイバル技術は、今日のADHDを診断する基準と同じである。
(狩りを成功させるには、すぐに注意を散らし、絶えず周りに目を配らなければならない。同時に多くの作業をこなし、複数の獲物を追いかけられなくてはならない。危険を冒すことを恐れてはならない。
ある動物を追いかけ始めてから別のチャンスに巡りあったら、すぐさまコースを変更して新しい獲物を追うよう決断できなくてはならない。
破滅が迫っているような感覚があると、捕食者の存在の可能性を常に意識し、警戒することが出来る。狩りの間はアドレナリンの高揚感で生き生きとするが、住居の掃除などの退屈な仕事はぐずぐずと先延ばしにする。時間感覚は非常に速いか非常に遅いかのどちらかで、その瞬間の人生で興奮したり退屈したりする。)
・ ダーウィンの説とも符合するように、ハンターの特性は世代から世代へと受け継がれるというデータが出ており、それによって狩猟社会は確実に存続していくことができた。
一部のケースでは、ADHDの原因と研究者が考える、もしくは行動特性に影響を与えていると思われる遺伝子も発見されている。
アルコールや薬物依存との関連において発見された多型なドーパミンD4レセプターがそれで、世代から世代へと受け継がれている。
・ 狩猟社会が農耕社会と衝突すると、生き残るハンターは1割以下になる。
農業は狩猟より効率がよく、農耕なら狩猟の約10倍の人数を養えるので、農耕社会の人口密度は狩猟社会の約10倍になる。戦いでは、大人数が常に優位である。
家畜の疫病(水痘・ インフルエンザ・ 風疹など)により、ハンターは免疫を持たない為、多くが死に至った。
常にこれらの疫病にさらされるファーマーは免疫を持っている為、病にかかりはしても死に至らなかった。
また、ファーマーは、道具・ 武器を製作したり、政府・ 軍隊・ 王国を作り出し、ハンターと技術面で大きな差をつけた。
ヨーロッパ・ アジア・ アフリカ・ アメリカでも、ハンターは絶滅させられた。
生き残ったものは農耕社会に組み込まれ、欧米社会の人口の5~20%であるADHDの遺伝子保持者の先祖となった。
・ カリフォルニア大学とイェール大学で行われた研究により発表された論文によると、ADHDに関連する、新奇さと刺激を求める遺伝子の研究をたどり、それがヒトゲノムに大々的にはいってきたのはほぼ4万年前だと突き止めた。(2002年論文)
その遺伝子は、それを備えた者を、より優れたハンターにする。
また、人類が発祥の地(アフリカ)から他の場所に移動して地球全体に広がっていったのは、この遺伝子のおかげであるとも研究者は推測する。
・ ハンターであることには、確かにマイナス面がある。
刑務所にいる人間の大部分にはADHDがあると指摘する専門家もいる。
忘れっぽさ・ 乱雑・ 衝動性・ 飽きっぽさ はみな、建設的にもなれば破壊的にもなる。
ナイフが彫刻や創造活動の道具にもなれば、死をもたらす道具にもなるように、ハンターであることは、その人の人生とキャリアを形作りもし、打ち壊しもする。
そこで、ハンターであることを財産に変えるには、自分を知ることが最初の重要なステップとなる。
・ ADHDであるハンターが、新しい方向へ進み始めようとすると、いくつかの難題に直面する。
注意散漫・ 切迫感・ 衝動性・ 追い立てられるような感じ・ 危険が迫っているという感覚などだ。
しかしこれらは、何百年にもわたって、企業家やビジネス・ 芸術・ 政界で成功した人々が自分の気持ちをかき立て、偉業を成し遂げるために利用してきたファクターでもある。
・ 大方の研究者の一致した見解では、ADHDには脳の化学作用もしくは活動の何らかの変異がかかわっているという。刺激への反応、衝動の制御能力、時間の感覚などをコントロールする脳の部位が、ADHDのない人とは大きく違っているらしい。
脳の化学作用に変化をもたらす方法はいろいろあって、その多くはADHDの影響を抑えることができる。
例えば、運動。 脳の化学作用を変えるもっとも簡単で早い方法は、薬物の服用。
欧米では、ハンターは、大量のカフェイン(コーヒーなど)を摂取したり、アルコール依存やスピード・ マリファナなど違法薬物の中毒に成ったりすることが少なくない。
これらの薬物を使用するのは、自分で薬物療法を試みているわけだが、どれもADHDの影響をやわらげるのに大きな効果があるとはいえない。
ADHD治療としての薬物療法について。
リタリンやデキセドリンは、正規の薬物療法で、より危険もしくは違法な薬物の使用をこらえられない人にとって、命を救っているとさえいえよう。
しかし、これらの薬物療法の長期使用の影響はほとんどわかっていない。
・ セールスは、会社組織内でハンターが従事する割合が高いもっとも一般的な職種だろう。
ハンターはセールスにひきつけられるようだ。
セールスでは常に何か新しいことが起こり、チャレンジとリスクの両方が大きい。
内面のモチベーションが必要で、出かけて行き、動きまわらなくてはならない。
セールスをする人は自分で時間をかなりコントロールすることができるが、まさしくこれは狩りである!
・ 多くの会社は、商品もしくはサービスを売るのに、ハンターとファーマーのチームが大変有効であることに気づき始めている。
・ 桁外れに多くのADHDのある人が、非常に高い創造性を備えている。
創造性とADHDの関連についての研究はないが、創造力の高い人々の特性を研究している専門家は、その特性を述べながら実はADHDのある典型的な人の特性を述べているようだ。
ハロウェル博士もその経験から、創造性はADHDの特性の共通した面だと指摘する。
「衝動性がうまく働くと創造性になる」とまで言う。
・ ADHDは、あるかないかどちらかという診断が下るものではない。
程度が連続線状に連なり、カテゴリーもいくつかある。
多動なハンターもいれば、受動的もしくは夢想にふけっているかにみえる不活発なハンターもいる。
・ Archives of General Psychiatry に、子供の頃ADHDと診断された91名の男性の生き方を調査した記事が載っている。それを対照群である95名の正常な男性の成人後の人生の失敗・ 成功と比べるものだ。
その記事は、メディアにADHDの「悪いニュース」として紹介されたが(アルコール中毒・ 薬物常用者・ 落第・ 低収入などがより多い)、執筆者が指摘したけれど大きくはとりあげられなかったポイントがある。
そのひとつが企業家のパーセンテージで、対照群では企業家は5%だが、ADHD群では20%が自分の会社を持っている。
・ 充実期に入った企業のニーズは、創立者であるハンターの能力とはまったく相いれないものだ。
創立者でありボスであるハンターは、自分がぶらぶらし、ひとの仕事に鼻を突っ込み、ただ刺激のために新しいプロジェクトを始めてはリスクを冒していることに気がつく。
うまくいくとわかっている業務から方向をずらし、貴重な資金を回したりする。
このようにして多くの企業家は、会社がファーマー向けの初期の成熟期に達したときにハンターであり続けようとして、自分のビジネスを台なしにしてしまう。
ではどうやったらその罠に落ちるのを避けられるか。
スタートの初日から、フランチャイズを売るつもりでスタートするのだ。
ハンターは、時がきたら場を明け渡すことを覚えなくてはならない。
・ ハンターの最も一般的特性は、創造性が高いということだ。
変幻自在の角度から世界を見つめ、問題解決にあたって垂直思考ではなく水平思考をする。
これは天性の強みで、自分の心のなかと世の中の茂みをあさって、新しいアイディア、発明、ビジネスを探させる。
・ ハンターの衝動性とすぐに熱中できる傾向は、集中する対象が散らばるという不都合な面もあるので、アイデアが思い浮かんだらまずは書き留めて、少なくとも1~3日は実行に移さないというテクニックが非常に有効である。
ものごとを遅らせる性癖はADHDの特性とされるが、これはファーマー向けの用事に対するときだ。
むしろハンターは、ものごとに飛びつくという天性の傾向と衝動性によりものごとを性急に進めようとする性癖を持つことが多い。
・ ハンターは、いまの仕事をやめて次に移ろうとする衝動が強い。
少なくとも最初の数回は衝動任せになるようだ。
話をしたADHDのある成人の中には何度も仕事を変わったひとがいて、その後、衝動は意図的に抑えればすぐに消えることに気づいたという。
もう一日、もう一日と仕事を続けていけば、やがて続けるほうが変わるよりも快適である段階に達するという。
・ 物忘れを改める第一ステップは、まず注意を払うことだ。
これは百の方向に心が向くハンターには特に難題である。車の鍵はトワイライトゾーンの住民に飲み込まれるようだ。クシやブラシは、驚くべき正確さで掻き消える。
財布や小銭入れをしょっちゅう置き忘れるのは、とりわけうんざりすることだ。
解決策は、原点の認識という概念にある。
車の鍵を置いた時は、置き場のキッチンカウンターを一瞬眺め、鍵がそこにあることを心に留める。
ものごとを思い出せないのは、たいてい最初に注意を払わなかった時だ。
これは、当たり前のように聞こえるかもしれないが、有効なテクニックだ。
・ ADHDの特徴のひとつに、聴覚処理の問題がある。
ハンターは視覚によって考える傾向があり、言語記憶に問題があることが多いが、これはビジネスに非常に大きな障害となる。
言語に根ざす事柄なら、こちらの部屋から別の部屋へ行っただけで忘れてしまう。
ビジネスの会議中に「議題を覚えている」のさえ難しいこともある。
これを裏返せば、ハンターは視覚処理が得意ということだ。したがって、覚えていたい概念や物の絵を頭のなかで描くという単純なテクニックが使える。
・ 私が話したハンタービジネスマンの多くは、かなりの甘党だ。これはハンターが狩りの最中に短時間で大量のエネルギーを摂取する必要があることと関係するのでは、と推理する。
また、おそらくすぐに退屈することに関係するのだろうが、多くのハンターは過度のアルコール好きである。
また、忙しいハンタービジネスマンは、たいていジャンクフードで食事を済ます。
子供時代にADHDと診断された成人の数の調査が最近行われた。この調査対象はそもそもの選抜基準が偏っており、結果はそれを考慮して検討するべきだが、ADHDのない成人に比べ短命であるという結果が出ている。
・ 食事と運動のふたつは、ハンターの心と身体に必須である。
毎日の運動は心的機能を高めることが明らかになっており、ADHDの症状を軽減さえするという。
・ ハンターはほとんど必ず、組織化(ビジネスの具体的プランを練って、その目標をどうやって達成しようとするのか。期限はあるか。そこまでの各ステップはどのようなものか。)が苦手という問題を持っている。
おそらく、視覚により導かれているので、あらゆることを一度に認識するからかもしれないし、別の理由があるのかもしれない。理由はどうあれ問題であることには変わりない。
しかし、組織化戦略は、習うことができる。私が見つけた最良の方法は、毎日「やること」リストを紙に書くことだ。A・ Bと記した2つの箱を用意し、空の引き出しにCと記したラベルを貼る。
リストにあるすべて、オフィスにはいってくるあらゆる書類は毎日、A・ B・ Cのいずれかの優先順位をつける。
Aはすぐに処理、BはAが終わったら処理、Cは何であれ、置いておいてもよい案件。
私が話をしたハンターのビジネスマン、ライター、その他のプロの多くは、この方法を採用していた。
広めたのはアラン・ ラケイン。
・ 会社の企業段階が過ぎたら、少なくともいくつかの特定の領域でファーマーをマネージャーにするのが懸命な選択だ。例えば、予算と収支に関する権限を与えておけば、あなたが新しい方向に関心を向けようとするときはうまく論戦を張らなくてはならず、それでも経理責任者が反対票を投じるという自体が起こりうる。
権限を与えられたファーマーは、競争力のある安定した事業に作り上げるのに手を貸してくれる。
・ 会社でのハンターとしてのあなたの役目は、周囲に常に警戒を怠らないことだ。競争相手をチェックする。新しいやり方を探す。国内を旅して、競争する必要のない同業者との間にネットワークを作り、アイディアやテクニックを交換しあう。トレードショーにいき、セミナーに出席する。新しいアイディアを覚えて会社に持ち帰る。
・ ADHDの精神医学的診断基準のひとつに、たくさんのプロジェクトに着手するのに終わらせられないという項目がある。原因は、手を出しすぎた結果であることが多い。
ほとんどのハンターがやり遂げられるのは、自分ができると思っている量の半分だろう。
・ きちんとトレーニングを行うよう、自分に強要しよう。任せようと思っている仕事をきちんとできるように教えるのに費やす時間は、この先その仕事から開放されて得られる数百時間となって戻ってくる。
生活の知恵に秀でているビジネスマンはこの算数を知っていて、たとえイライラしても、難しくても、仕事をきちんと教えるよう自分に強要する。
・ ADHDは遺伝的要因があるので、ハンターが子供を持ったら、そのなかの誰かはハンターである可能性が高い。子育ては元来むずかしいものだが、それにさらに難題が加わることになる。
本書で論じたハンターとして成功するための原則は、家庭と子供と、そして学校にも適用できる。
またいつもの癖で、結構書いてしまいましたけれど( ^^;)
詳細は、本でどうぞ~。